よく噛んで食べてない

メンタル

ぼくは普段からあんまりよく噛んで食べてない。

さすがに美容師の昼メシほどは急いでないから、1口20回くらいは噛んでいる。

でも、ぼくがクライアントにしばしば指導するように「ドロドロになるまで噛んで〜」は、自分でぜんぜん実践していない。

なぜ熱心に他人に指導していることを、 ぼくは大してやっていないのか。

今回は、そのあたりを詳しくお伝えしようと思う。

 

ぼくがサポートするクライアントの大半は、胃腸機能が落ちている。

胃腸の仕事は、食べ物を細かく消化して、滞りなく栄養を体内へ吸収させること。

慢性症状を治すために栄養は不可欠だから、この作業はスムーズに行われて損はない。

でも、胃腸機能が落ちているから、せっかく摂取した栄養を満足に消化吸収させられない。

ならば、食べ物が胃に到達する前に、すこしでも自力で食べ物を消化しておいたほうがいい。

そこで欠かせない作業が「咀嚼」だ。咀嚼はぼくたちが自力でできる唯一の消化作業だから。

そういうわけで、ぼくはクライアントに冒頭のような指導をするというわけ。

 

しかし、ぼく自身は毎回の食事でドロドロにするまで噛み尽くすことは到底していない。

なんだか顎が疲れるし、熱いものは冷めて確実にマズくなる。

おまけに、てきとうな咀嚼でもラーメン程度なら胃もたれにならないので、もはやそれらのデメリットを超える咀嚼のメリットが見当たらないのである。

こないだ、神保町の古本屋を巡っていたら、日本の整体の第一人者ともいわれる野口晴哉氏の本に出会った。

本の中に、このような記述があった。

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ガツガツ食べるときは、ガツガツ食べたほうが旨いのです。

そういう胃袋がよく働いているときに、ゆっくり噛めとか、丁寧に噛めとか言われてやっていると、胃袋が弱くなってきて、よく噛んだものでないと、消化できなくなってくるのです。

お腹がすいてガツガツ食べたいのに、ゆっくり食べていると、胃袋がだんだんこなさなくなってくる。だから、本当の食べ方を知っているのは、我々のカラダ自体なのです。
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冒頭でぼくのクライアントに対する指導の一風景をお見せしたが、実際はもうすこし伝え方を工夫していたりする。

〝食事は楽しくておいしいことが大前提だから、ともかく咀嚼をすると胃がラクなんだということを一度知るために咀嚼をなさい。咀嚼の有無で食後の体感が違うことはわかったら、今度はそれを出し入れするといい。一人でじっくり食べられるときだけすればいいし、みんなと楽しく食事をするときは気にしないようにーーー〟

なんの気なしにこれまでそのように伝えてきたが、20代前半のころから読んでいた野口晴哉氏の古い著書を読んで、唐突に考えがピタリと適合して驚愕させられた。咀嚼に関して、ぼくと同じように考える健康指導者をこれまで一度も見たことがなかったので。

 

考えてみれば、これは咀嚼に限った話ではないかもしれない。

世の中には「健康にいい」とされる方法があまりにも無限に存在している。

よく噛みなさい。朝食はやめなさい。糖質は減らしなさい。タンパク質は摂りなさい。

そのほとんどは、誰かのある時期にとっては正解だが、あなたの今にとって正解とは限らない。

 

ぼく自身、クライアントへの咀嚼の指導方法は、性格や症状やライフスタイルによって百人百色。

場合によっては、胃もたれするだろうなと思っても、食事の楽しさを思い出させるために「咀嚼のことは気にせず、楽しんできてください」と伝えることすらある。

咀嚼ですらそうなのだから、今あなたが実践している取り組みについて、ほんとうに「じぶん」の「いま」に当てはまるのか、立ち止まって考えたほうがいい。

正解は外にはない。きっとあなたのカラダの中にある。

 

ぼくは、咀嚼に頼るという手段はつねに持ちつつ、頼りすぎなくても大抵のものを処理できるタフなカラダを維持したい。

なぜかといえば、人生を旅と食で埋め尽くしたいと思っているから。

海外の街角で屋台フードを楽しむとき、横から咀嚼にジャマをされたくはない。豪快な肉料理は冷めて固くなる前にいただきたい。

タフなカラダでいないと、食べられるものの範囲はどんどん狭くなる。これではグルメを愛する人種としてなかなかに悲しい。

自分のカラダがいいと言ってるからやる。自分のカラダがいらないと言ってるからいらない。

そういう主体的なひとを増やしていきたいな〜