「乾燥肌やドライアイにはビタミンAが効く」
こういう話を聞いてサプリでせっせとビタミンAを摂っている人は多いです。
でも、ビタミンAは、それよりも手前の糖質やタンパク質がうまく摂れていない人がモノにするのは難しい栄養素です。
機械的にビタミンA(=以下、VA)を摂っているけども、なんだか効果を感じないというひとは、ぜひ今回の話を最後まで聞いてみてください。
■まずはビタミンの基礎知識
ビタミンとは、カラダの中で働く従業員です。
アルコールを分解したり、ホルモンをつくったり、カラダの生命維持に関わるいろんな部署で働いています。
ビタミンは、ざっくりと2つに分けると「水溶性」と「脂溶性」があります。
水溶性ビタミンは、VBとVCです。
吸収もされやすいが排出もされやすいため、時間を空けてこまめに摂るのがコツで、過剰摂取によるリスクは少ない特徴があります。
そして、今回の主役であるVAは脂溶性です。
読んで字のごとく「脂に溶けやすい性質」があります。
脂溶性ビタミンは、水溶性ビタミンに比べて吸収されにくいビタミンです。
VAが効かない原因として、わりとポピュラーなのが「胆汁不足」です。
VAは脂溶性ビタミンなので、脂に溶かしてから吸収させる必要があるんですが、このときVAと脂をなじませる働き(=乳化)をするのが「胆汁」です。
マヨネーズをつくるとき、酢と油をなじませる働きをする黄身のような存在ですね。
この胆汁がないと、VAを乳化させられないので、吸収できなくなります。
つまり「VAを摂取していてもVA不足」になるということ。
胆汁はコレステロールから作られるので、コレステロール不足=胆汁不足です。日本でなぜか嫌われているコレステロールって、実はとても大事なものなんです。
LDLコレステロールの分子栄養学的な基準値は100。これより少ないと胆汁不足の可能性があります。
それから、SIBOや過敏性腸症候群がある場合も胆汁不足になります。
胆汁が不足すると油を分解できないので、揚げ物や肉料理を食べるとお腹がもたれるようになります。
■亜鉛とナイアシンも必要
ちょっとややこしい話になりますが、VAは3つに分けられます。「レチノール、レチナール、レチノイン酸(活性型)」です。
こんな名前は覚えなくていいですが、大切なのは、「一般的なVAサプリはレチノールで、実際に体内で作用するのは活性型のレチノイン酸」という点。
VAは過剰摂取リスクがあるので、レチノールの形で摂取しておき、必要な分だけ肝臓でレチノイン酸に代謝して、過剰摂取が起きないようにコントロールしているというわけ。
・・カラダってすごいですよねえ。
ちなみにVAの過剰摂取で奇形児などのリスクがあるといわれていますが、それもレチノールの形で摂取するぶんにはリスクは低め。
注意すべきは、活性型であるレチノイン製剤を医師に処方されたケースです。
つまり、VAが欠乏していて急を要する場合は別として、VAはレチノールの形で摂取して、必要な分だけを過不足なくレチノイン酸に代謝させるのが安全に不足解消するコツなんですね。
さて、この3つのVAが代謝される様子を図で表してみますと、
レチノール
↓タンパク質、亜鉛、ナイアシン
レチナール
↓ナイアシン
レチノイン酸
こんな感じになります。
つまり、摂取したレチノールを活性型のレチノイン酸に代謝させるには、タンパク質・亜鉛・ナイアシンも必要なんです。
よってVAを効かせるにはVAだけでは足りない。やっぱり栄養はバランスですねえ。
■VAのはたらき
VAが不足すると、以下の症状が起きやすくなります。
・ドライアイ
・夜盲症
・免疫力低下
夜盲症という診断名はつかないまでも、夜中に目が覚めてから暗さに目が順応してくるまで時間がかかるひとは、VA不足がある可能性が高いです。
それから、サラッと書きましたが、VAと免疫の関連はかなり重要です。
リーキーガット症候群って、聞いたことがありますか。直訳すると「腸もれ」です。
腸に穴が空かないための防御ネットを維持するためにVAが必要です。
裏を返せば、VA不足でリーキーガットは起こりやすくなるということ。
■VAの摂取方法
厚生労働省が定めるVAの1日推奨量が、30〜49歳男性で約3,000IU、女性は約2,300IU。
ただし、前述した通り、レチノールの形で摂取した場合であっても過剰摂取リスクはゼロではないので、耐用上限量は男女ともに約9,000IUとなっています。
VAは比較的サプリがなくても食材から摂りやすいですよ。
たとえばこんなかんじ。
・ほうれん草20g…約1,200IU
・卵3個…約1,500IU
・にんじん100g…約2,400IU
わりと身近な食品から摂れますが、外食やコンビニ食ではなかなか十分量に達しにくいかなという印象。
この冬、乾燥肌やアレルギーでお悩みのひとは、ぜひVAのことを頭の片隅に入れておいてください。
その手前の糖質やタンパク質の摂り方で伸びしろがあるひとは、そちら優先で!