眠れない。
動悸がする。
朝起きられない。
胃腸の調子が悪い。
なんとなく身体がだるい。
こんな不調が続いて病院へ行っても、とくに大きな異常は見つからない。
そこでネットを駆使すると「その不調、自律神経の乱れが原因かもしれません」なんて書いてある。
なるほど。自分を苦しめていた犯人は、自律神経だったのか。
そう思って、みなさんいっせいに自律神経を整える方法を探し始めます。
深呼吸をしてみたり、ストレッチをしてみたり、むりやり早起きして朝日を浴びてみたり。
でも、ここで一度考えてみてほしいんです。
ほんとうに自律神経が悪いのでしょうか・・?
ぼくは自律神経ってかなり冤罪をかけられていると思っています。
ちょっとだけむずかしい言葉をつかいますね。
そもそも、自律神経の不調を大きく分けると2種類あります。
「器質的な異常」と「機能的な異常」といいます。
器質的な異常とは、神経そのものに病変や損傷がある状態。
車でいえば、配線が切れていたり、部品そのものが壊れていたりする状態です。
これは文字どおり「故障」ですね。
一方で、ぼくたちが日常で「自律神経が乱れている」と表現しているものの多くは、こうした故障とは少し違います。
神経そのものが壊れているのではなく、そのときの身体の状況に応じて、自律神経の働き方が偏っている。
つまり「器質的」でなく「機能的」な問題なんですね。
たとえば真夏の部屋で、エアコンの設定温度を16℃にしてみてください。
エアコンはものすごい勢いで部屋を冷やし始めます。
ええ、寒いですよね。冷え性の人にはたまりません。
こんなとき「このエアコン、壊れてる!」って思いますか?ならないですよね。
エアコンは壊れているどころか、むしろ設定された条件に合わせて、一生懸命はたらいています。
だったら、見直すべきはエアコンそのものではありません。
「なぜ16℃という設定になっているのか?」という背景です。
みなさんが「自律神経の乱れ」と呼ぶものも、じつはこれと似ています。
睡眠不足が続いている。
カロリー不足がある。
血糖値が不安定になっている。
人間関係がうまくいっていない。
身体のどこかで炎症が起きている。
こうした状況に置かれれば、身体はその環境に対応しなければいけません。
交感神経を緊張させて、心拍数を上げたり、筋肉に血液を集めたり、消化を後回しにすることで、その危機を乗り越えようとします。
つまり、自律神経が勝手に暴走しているのではありません。
その身体に必要だから、そう働いているだけなんです。
それなのに、動悸がするたびに、眠れないたびに、胃もたれが起きるたびに、
「自律神経がおかしい」
「自律神経が乱れている」
「自律神経がよわっている」
・・というカンジで、自律神経のせいにしてしまいます。
こんな責任を押し付けられたら、自律神経としてはたまったものじゃありません。
「いや、こっちは今の身体の状態に合わせて働いているだけなんですけど」と言いたくなるでしょう。
だからぼくは、皆さんが訴える不調の大半において自律神経はわるくないと思っています。
もちろん、実際に神経そのものが障害される病気はあります。
そうした器質的な異常は、きちんと医療の対象として考えなければいけません。
でも、少なくとも、機能的な自律神経の不調を考えるのであれば、
「どうすれば副交感神経を優位にできるんだろう?」
「自律神経を整えるツボはどこだろう?」
「自律神経にいい食べ物はなんだろう?」
と、自律神経ばかりを追いかける前に考えることがあります。
なぜ、いま自律神経はこの働き方をする必要があるのか。
ここです。ここに目を向けない限り、その不調は見事なまでに終わらない。
自律神経そのものはわるくないのに、自律神経のことをずっと調べていても、そりゃ答えは出ないはずです。
そう考えると、自律神経そのものについて延々と学び続けることって、ちょっとアホらしいでしょ・・?
「交感神経がどうで、副交感神経がどうで……」と自律神経ばかりを追いかけるより、自分の身体がなぜ今その反応を必要としているのかを考えたほうがいい。
自律神経をどうにかするのではなく、自律神経がそう働かざるを得ない理由を見つける。
ここがわかるだけでも、自律神経との付き合い方は大きく変わります。
「自律神経のことばっかり考えていたの、アホらしかったな」
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